食養生

中医学の治療体系は、大きく分けて、

1.薬物療法、2.鍼灸療法、3.食養生から構成されています。

中国において、医学が著しい発展を遂げたのは、紀元前400年頃

当時すでに、「食医」「疾医(内科医)」「瘍医(外科医)」「獣医」という四階級の医師の存在が明らかになっています。

ここでは中医の中でも身近な食事についての「食養生」についてお話したいと思います。

中医栄養学の概要は、

1.薬食同源

薬と食物とは一体のものと、とらえています。

2.一物全体

食物を全体としてとらえる考え方です。

近代栄養学では食べられる部分と廃棄する部分があるとしています。中医栄養学では、食物を全体としてとらえ、その効用を健康維持に役立てます。

3.天一合一思想

人間は、地上に存在する他の動物や植物と同じように、自然界の構成要因の一つであり、自然の大きな循環の中で生かされている、とする考え方です。

 食の味によって異なる作用


生薬に薬能、薬性、薬味があるように、食物にも食能や食味、食性があり、それらをよく知ることが大切です。
食物には大きく、酸・苦・甘・辛・鹹の5種類の味があり、それぞれの味によって特有の効用をもちます。

1.酸味
酸味の食物は収斂作用、消炎作用があり、寝汗、長引く下痢、尿の出すぎなどに効果があります。

2.苦味
苦い味の食物は、瀉出し、水滞を乾かし、堅める作用があり、熱証や体内に湿気がこもって起こる病気に効果があります。

3.甘味
甘い味は、人体の衰えを補養し、痛みを緩和します。
滋養強壮作用があるので、身体気血の虚に有効です。

4.辛味
辛い味は、身体を温めて発散させ、気血のめぐりをよくする作用があります。

5.鹹味
しおからい味は、やわらげて潤す作用があります。
皮膚の下にできるしこり、リンパの腫れ、便秘などに効果的です。

 食物の性質

ある食物を食べた時に、人体がどのような反応を示すのか、経験に基づいて、温、寒、平という性質(食性)がすべての食物についてわかっています。


温性……食べた後で、体が温かくなる性質の食物で冷えを除く効果があります。
寒性……食べた後で、体が涼しくなる性質の食物で清熱作用があります。
平性……食べた後、温性、寒性のどちらの作用傾向もない、比較的穏やかな性質の食物です。

調理方法によっては異なってくる場合もありますが、広い意味では、日常の食品として毎日でも食べられるものを指します。

 基本的な食養生の考え方

日常、何気なく食べている食物も、食味・食性という大切な要素を持っているわけですが、食物の摂取は、個人の体質、居住条件、年齢、性別、四季の条件などによって、微妙に異なってきます。

I.体質による食物の運用
体質による食物の運用は、大きく分けて1.虚寒のタイプと2.実熱のタイプになります。
それぞれ、とるべき食物、控える食物が決まっています。

II.環境による食物の運用
1.季節の条件
日本は、春夏秋冬という四季の彩りに恵まれています。
しかし、四季の気候変化は、それぞれの特有の自然条件を持ち、人体の生理機能にも、直接、間接的に影響を与えます。
ですから、日常の飲食においても、四季の条件を考慮していく必要があります。


◎春の自然条件は“風”であり、風邪が発生しやすくなります。
風邪は、主に身体の上部を侵し、頭痛、くしゃみ、咳、鼻づまりなどの症状が特徴ですが、こうした風邪に対しては、生姜、葱、紫蘇、菊花など、発散の作用のある食物を食べるようにします。


◎梅雨期の自然条件は“湿”であり、湿邪による病が発生しやすくなります。
湿邪は陰性で脾を犯しやすく、食欲不振、消化不良、下痢、胃が重苦しい、浮腫などの症状が特徴です。
湿邪に対しては水分の代謝をよくすることが原則ですから、ハトムギ、トウモロコシの花柱、スイカ、小豆など利水効果のある食物をとるようにします。


◎夏の自然条件は“暑”であり、暑邪による病が発生しやすくなります。
暑邪は、多汗、口渇などの熱症状とともに、四肢倦怠、食欲不振、下痢などの症状が特徴です。
暑邪に対しては、スイカ、梨、野菜のしぼり汁、緑豆など、発熱や口渇に効用のある食物が適しています。


◎秋の自然条件は、“燥”であり、口、鼻、咽喉の乾燥、口や皮膚のかさつきなど、燥邪による症状が多くなります。
燥邪に対しては潤すことが原則ですから、アンズの仁(杏仁)、水分不足を補う梨、柑橘類の汁などが適しています。


◎冬の自然条件は“寒”であり、寒邪による病が発生しやすくなります。
寒邪は、肌を守る陽気を傷つけ、悪寒、発熱、頭痛、手足の冷え、下痢、さらに吐き気、腹痛などの症状を伴うこともあります。
寒邪に対しては温めることが原則ですから、生姜、茴香、肉桂などを用いて、加熱処理の調理をすると効果があります。

2.居住条件
人は、住む土地によって、自然条件、生活環境が異なりますから、生理機能にも違いが生じてきます。

3.年齢・性別

妊産婦や高齢、子供・・その生理機能に適した考えが必要です。

 食材別効能

体の熱を冷ます食材(涼寒性)

|胡瓜|大根|セロリ|トマト|青梗菜|ユリ根|ホウレンソウ|茄子|冬瓜|もやし|黒くわい|湯葉。いちご|リンゴ|梨|果物一般|ピータン|小麦|そば|アロエ|竹の子|牛蒡|茗荷|海藻|昆布|緑茶|菊|ジュンサイ|柿|柚子|レンコン|タンポポ|ワラビ|タコ|ハマグリ|スッポン|シジミ|塩|醤油|味噌|サフラン|こんにゃく| など

身体の冷えを治す(温熱性)

|南瓜|ヨモギ|なつめ|みかん|もも|生姜|玉ねぎ|ラッキョウ|ネギ|紫蘇|紫蘇の実|ニラ|クルミ|もち米|エビ|ナマコ|ウナギ|青味魚|マグロ|牛肉|鶏肉|鹿肉|羊肉|紅茶|黒砂糖|胡椒|山椒|グローブ|わさび|水あめ|紅花| など

どちらにも使える食材

|人参|白菜|キャベツ|山芋|芋類|黒豆|小豆|麦芽|豆類|ハトムギ|銀杏|米|トウモロコシ|ハスの実|鶏卵|ゴマ|クコの実|オクラ|川魚|落花生|キクラゲ|ブドウ|ベリー類|ハチミツ|チーズ|豚肉|内臓|アワビ|ホタテ|梅| など

気を養う食材

ヌルヌルとしたもの。納豆、おくら、やまいも、昆布、わかめ、寒天。雷魚やウツボなども精力が高まると言われ、常食されています。

最初からゼリー状のものは、すべて精力になります。

身体を整えるためのお勧め食材

モヤシや緑豆は、血液浄化に、小豆は、貧血予防に。

また、生姜は、東洋医学で最も重要な薬剤です。生姜を抜いたら漢方薬の
8割は成立しないと言われるほど、身体には必要な食べ物です。

飲食全般の注意事項(量と偏り)

1.食事の量について
個人の適量を守ることが原則の一つです。


(i)少食の禁忌…飲食が適量の範囲に達しない場合、滋養の元を失って肉体、精神は機能を失います。
(ii)過食の禁忌…脾胃の能力を超える過量の飲食は、機能が失調して病症が表れます。


2.偏食について
一つの食味・食性を偏食すると健康を害します。


(i)寒性偏食の禁忌…果物や瓜類はそれ自体寒性の性質がありますが、さらに冷えたものを摂取しすぎると脾胃の陽気が衰えます。
(ii)温性・辛味の過食の禁忌…葱、唐辛子、生姜などの辛味のものを多量にとり、さらに温熱傾向の料理法だけの食物をとり続けると脾胃に内熱が生じます。
(iii)厚味の過食の禁忌…味が濃く、脂っこい食物の過食は、脂液が脈管に入り気血の運行が阻害されます。

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